海外展示会
2025.10.27
【海外展示会】 Formnext Asia Shenzhen 及び AM関連企業視察ツアー報告(インターモールド振興会)
1.ツアー概要
■ツアー名称: Formnext Asia Shenzhen&深圳 Additive Manufacturing企業視察5日間
Formnext Asia Shenzhen 2025 公式サイトはこちら
■ツアー企画:インターモールド振興会
■旅行期間: 2025年8月25日(月)~8月29日(金) (4泊5日)、参加者は8名。
■滞在都市: 中国・深圳市

日本(羽田)から香港空港までは約4時間。そこからバスに1時間のり、香港と中国の国境でバスを降り、歩いて国境を渡る。国境を越えてから、バスでさらに30分程度でホテル着。日本と中国(深圳)の時差は1時間。

香港から中国へは、物価が3分の1程度という安さから、週末になると国境を渡り買い物・観光客などで多くの人が訪れるそう。街中は、高層ビルがならぶ。一方で、自然も豊かなのが特徴的。
2.中国・深圳の基本情報(出典:Shenzhen Fan)

人口:約1,790万人
平均年齢32.5歳(驚異的な若さ!)
経済:GDP約3.68兆元、世界トップ10規模
成長背景:1979–80年の経済特区指定による爆発的発展
主な産業:ハイテク、金融、製造、輸出
インフラ:超高層ビル群、交通網の高度発展深圳は「アジアのシリコンバレー」と呼ばれるほど。以下のような世界的企業が本社を置く。
・Huawei ・Tencent ・BYD ・DJI
3.Formnext Asia Shenzhen 2025 の結果

●来場者数:20,715名(78%増)、延べ来場数:27,183名
●海外来場者数:733名(158%増)、64の国と地域から参加
●出展者数:265社
●展示面積:20,000㎡
●コンファレンス:14セッション、150以上の講演を実施
次回: Formnext Asia Shenzhen 2026 は、2026年8月26日~28日に開催。
4.Formnext Asia Shenzhen 2025 の視察
2日目: 2025年8月26日(火)
Formnext Asia Shenzhen@深圳国际会展中心(深圳国際展示場)
Formnext ASIAは5ホールでの単館開催。深圳国际会展中心(深圳国際展示場)は全部で16ホールある。同展示会場内の9~12ホールでは、AI・人工知能関連の展示会も開催されていた。


AM:Formnext ASIA SHENZHEN主催者のGuangzhou Guangya Messe Frankfurt(以下GGMF)・Crystal氏誘導のもと8つの出展者ブースをVIPツアーで視察

1.Farsoon Technologies Co., Ltd 湖南华曙高科技股份有限公司
Metal 3D printer, SLS 3D printer
創業:2009年、湖南省長沙市。創業者はレーザー焼結技術のエキスパート。レーザーパウダーベッド3Dプリンタ中国国内トップのプレイヤーで、グローバル市場にも広く展開


2.Xi’an Bright Laser Technologies Co., Ltd. (BLT) 西安铂力特增材技术股份有限公司
3D printing industry leading enterprises in China. Metal 3D printer
金属3Dプリント(レーザーパウダーベッド)のリーディング企業。立上げは2011年、現在1,000〜5,000名規模で上場企業。中国で最も大きいと自負している。(参加者からも工場を見たかったので、視察先に入っていて良かったという声があった。)

3.Shenzhen Kings 3D Printing Technology Co.,Ltd. 深圳市金石三维打印科技有限公司
深セン拠点、2008年プロトタイピング事業から発展し、2015年に3Dプリンタメーカー設立。SLA/SLS/FDM/SLM 樹脂中心 中~大サイズに強みを持つ。


4.China HP Co., Ltd.中国惠普有限公司
金属3Dプリンティング(Metal Jet)、パウダーベッド方式技術3Dプリンター。

5.Rongsu Technology Co., Ltd. 苏州融速智造科技有限公司
中国・蘇州を拠点とする、金属DED(Directed Energy Deposition)方式に特化した3Dプリンタメーカー。

6.Zrapid technologies co. ltd 苏州中瑞智创三维科技股份有限公司
中国・蘇州の企業で、SLA/SLM/SLSなど複数方式の樹脂・金属・セラミック3Dプリンタを自社開発。設備の製造や販売がメイン。

7.Nanjing Enigma Automation Technology Co., Ltd 南京英尼格玛工业自动化技术有限公司
DED 3D printer, automation & intelligent systems。ワイヤ供給+アーク加熱により高速で大型構造部品出力が可能。大きさと速さに自信がある。
PM:自由視察
展示会場内では、軍事用製品として撮影NGのサンプルも展示されていた。自動車、航空関係、医療(歯科)、と軍事関係の製品も複数展示されていた。展示会場奥は樹脂プリンタ・素材メーカーが並びカラフルなエリアが続く。toBの展示会にも関わらず、子供連れの来場者も多く、何かビジネスにできないかと探している来場者が多いように見受けられた。
特に目立っていたのは、「POLLY POLYMER」の「STARAY」のシューズで、のちの工場視察のuniwinやKings3Dの担当者からも聞かれたが、中国国内では3Dプリンタ製シューズが流行している。新しいものと流行に敏感な中国市場マーケットに対して、3Dプリンタ技術がよくフィットしていることがわかる。展示会場内ではほぼ日本人は見られなかったが、結果としては64か国・地域から来場があり、非常に活気があった。


5.工場視察
3日目: 2025年8月27日(水) 3社
工場視察① Xi’an Bright Laser Technologies Co., Ltd.(BLT)(Shenzhen office)
2011年設立。金属3Dプリンティング(Laser Powder Bed Fusion)を中核に、産業向け印刷機(SLM)および粉末供給、ソフトウェア、材料、造形サービスを提供。自動生産ライン+ロボティック粉末循環体制でスマート工場化を構築。航空宇宙、エネルギー、自動車、医療、金型、電子、大学・研究所など2,800社を超える取引先がある。上海・深圳・渭南など国内複数拠点に加え、欧州・北米とも連携している。中国陝西省西安市に本社を置く。


昼食(11:30-13:30)
昼食時間には自然と、参加者同士の活発な議論がなされた。特に生産のために先行投資ができる環境というのは日本では考えられない、という声が多く聞かれた。成長のためにはリスクをとって動くという環境が中国では当然のようにある。
工場視察②: Uniwin (shenzhen) Technology Co., Ltd
レーザー積層造形(LB-PBF)技術を活用した金属3Dプリンターメーカ。航空機部品品、自動車、金型、宝飾などの産業向け) 金属3Dプリンターの製造・販売。

同社の技術では、独自技術により、レーザー焦点を当てる距離が遠くても問題のないように技術が形成されている。主に金属の加工が多く、航空品や電子製品のプロトタイプ製造に利用されている。試作品製造だけでなく、10個程度の小ロット生産を行っている。
福建省には4000平米の研究開発・テスト機工場を含む大きな拠点を持ち、上海と蘇州にも拠点を構えているとのこと。会社全体で70名が勤務しており、90%がこれら2つの拠点に集中しているそう。
工場視察③: Shenzhen Addireen Technologies Co., Ltd.
(レーザー&金属3Dプリンティングに18年の研究経験を持つチーム。高反射金属対応のグリーンレーザー方式を開発)

Addireen社は2023年に設立。従業員約200名。同社は親会社のShenzhen Gongda Laserが開発したグリーンレーザー技術を活用して、高精度レーザー加工を専門とし、特に要求品質の高い顧客向けの製品加工に強みを持っている。
2023年の売上は4,000万元(約8億円)。主に航空宇宙、エレクトロニクス産業に用いられている。創業者は40代。研究開発チームには博士号を持つ人、海外留学経験者、地元の人など多様な人材で構成されている。
Addireen社は、中国初のグリーンレーザーを開発。グリーンレーザーは精度に優れており、通常、赤レーザーは60~80ミクロンの精度であるが、このグリーンレーザーは 10~15ミクロンの精度であるから驚きである。これによって同社は純銅での加工が可能であり、純銅製品は今後、事業の柱として展開される予定。
現在の主要ユーザーは中国国内だが、日本市場には2月にTCTの展示会を通じてニーズがあることを認識しており、アフターサービスが可能な信頼できる代理店を積極的に探しているとのことだった。
4日目: 2025年8月28日(木)
工場視察④: Shenzhen Kings 3D Printing Technology Co.,Ltd.
(光造形、金属粉末、粉末焼結、押出積層など総合3Dプリンターメーカー。大型・高精度造形や材料調達・後処理まで一貫提供)

全社で1400名の従業員を擁し、生産管理担当は40名。SLA、SLM、SLS、FGF、DLP、FDMなど多岐にわたる3Dプリンティング技術に特化している。樹脂プリンターが生産の約90%を占める。樹脂プリンタと大型製品に強みを持つことから日本の漫画産業からも引き合いがある。キャラクターの立像などがFormnext ASIA展示会場でも設置されていた。
Kings 3Dの技術は、航空宇宙、自動車、医療、試作、靴型、建築など多様な業界に導入されている。特に需要が高いとされる4つの業界は、3Cの電子製品(スマホ、イヤホンなど)、航空飛行機、歯、靴。
中国国内からの需要では、自動車産業の例をとると、車体軽量化のニーズに対応し、特にチタンを用いた軽量化に貢献。
工場視察⑤: Han’s Laser Technology Industry Group
1996年設立。工業用レーザー装置の研究・開発・製造・販売(レーザーマーキング/切断/溶接/表面加工/ディスプレイなど多数モデルを展開)。

取引先は電子機器、自動車、半導体、医療、宝飾、包装、建材、通信など多岐にわたり、世界180以上の拠点+100カ国以上で営業・サービス展開。金属3DプリンターではSLM方式からロボット+粉末供給のLMD装置まで幅広く、活用分野も自動車・航空宇宙・金型・医療(歯科・インプラント・義歯)と多岐にわたる。2004年深セン株式市場で上場。
「2025年の中国トップ50テクノロジー企業」(Fortune China)リストに選出されるなど、その技術と貢献が高く評価され、中国内でレーザー機器メーカーとしての地位を確立している。その業績は、工場の敷地面積からも見て取れ、ショールームの広さだけでも圧巻であった。多岐にわたる産業向けのレーザー機器を製造・提供しており、主要な製品カテゴリーは、レーザーマーキング機、レーザー切断機、レーザー溶接機、3Dプリンターなど。
5日目: 2025年8月29日(金)
ホテル出発、香港空港へ(10:00)⇒ 羽田空港着、到着後解散(21:15)
6.総括
中国市場は勢いがあると聞いてはいたものの、展示会および企業視察を通じてそれを明確に実感した視察であり、参加者からは「今回の視察に参加してよかった」「得難い経験をした」「噂レベルだった中国の状況を実感できた」「一人では来ることができなかった」などの声をいただくことができた。
参加者は3Dプリンタメーカーから鋳造・金型メーカー、大学研究者など様々な立場であることも影響し、工場視察の間や食事時間などでは、複数の視点からの意見交換が活発になされた。訪れた企業は深圳の平均年齢から見て取れるように、若い人が非常に多く、20代~30代が大半であった。彼らは深圳という街に誇りを持っているような感じさえした。活気あるこの中国市場と日本は戦っていかなければならないのが現状であることを強く感じた。
インターモールド振興会では、Formnext Asia Shenzhenの主催者GGMFと長く協力関係を続けており、今回の視察行程はGGMFの協力の下、貴重な企業視察を盛り込むことができた。今後もこのようなツアーを企画していく予定のため、ぜひ参加いただき現地AM事情を感じ取ってもらいたい。

